JOURNAL

2023/12/04 21:58

私の体験とユーザーの声を元にシステムの様にアップデートを繰り返すプロダクトを作りたいと考えていました。
ホイッスルはその思想の代表的な商品となってくれたかと思います。たぶん発売から2年目が経ち。成熟されつつあるこのホイッスルの制作秘話を公開しようと思います。

私がホイッスルの重要性に気がついたきっかけは私の友人から聞いた救助活動の話でした。

友人が低山をハイキングしていたら谷底から「ピューピュー」と聞きなれない弱々しい音が聞こえ、谷の沢へ下っていくと滑落をして動けなくなっている登山客を発見したそうです。マイナーな低山だったのでホイッスルがなければ発見すら難しい場所でした。


私はボーイスカウトをしていたため、ホイッスルは重要であるとは考えていましたが、ホイッスルで助かった人の話を聞いてからは必ずホイッスルを持ち歩くようになりました。

しかし、市場のホイッスルは
・音量の少ないもの
・強い息が必要なもの
・重たいもの
など緊急用として心許ないホイッスルばかりなことに不満を持っていました。
それに買うまで性能がわからない事にも不満がありました。
スポーツ競技用ホイッスル、水難救助用ホイッスル、救助用ホイッスル、100円のおもちゃ、楽器などを研究しました。ホイッスルはどれも一長一短ということがわかり緊急時に使いやすいホイッスルは見つかりませんでした。

私がロングトレイル(パフィシッククレストトレイル)へ行くことも決めており、常に携帯しても存在感の少ない大音量ホイッスルが欲しい!
というきっかけで金型を考慮したデザインに縛られることのなく、3Dプリントを使用した自由な設計でホイッスルの開発をスタートしました。


ホイッスルの設計について

ホイッスルは機械設計プロセスに沿って設計を始めました。というよりも大学では機械設計の勉強をしていたので自然と機械設計のプロセスで設計する様にしています。

①概念設計(企画やコンセプト)
②基本設計(実現性の調査)
③詳細設計(図面)
④生産設計(生産のための設計)

別に上記のプロセスじゃなくてもいいです。設計やデザインは自由だと思っています。しかしチームをまとめたり、自分の思考をまとめるのに大切だと思っています。
(現在は1人でMIYAGEN Trail Engineeringをしていますが将来のためにシステム作りをしたい)

①概念設計

ホイッスルを設計するにあたり想定する状況を想像しました。
- 足の骨折
- 腕の骨折
- 胸骨や肋骨の骨折
- 雨
- 森の中

上記から設計要件は下記と予測しました。
- 胸を骨折して呼吸すら難しい状況で弱い呼吸でも鳴る設計
- 頬の伸縮で起こす吐息でも鳴る設計
- 強く吹けば強く鳴る設計
- 水が入り込んでも簡単に取り除ける設計
- 森の中でも聞き取りやすい音域と音程
- 常時携帯しても違和感を感じない小型軽量性能

つまり商品のコンセプトは下記のとおりとなります。

「超軽量小型かつ大音量で鳴らしやすいホイッスル」

これが簡単に作れたら市場にはこのようなホイッスルが溢れているはずです。しかし存在していないのですから難しい設計となりました。

②基本設計

概念設計(企画やコンセプト)が完了したら実現可能なのかを検討し、3DCADを使って設計を進めます。問題が無いかシミュレーションを何度も繰り返し設計を進めていきます。
私はホイッスルの設計は初めてのことなので他社や論文を参考にさせていただきました。サッカー用、水難救助用、リコーダー、小学生が携帯するホイッスルなどをよく観察しました。
この観察をベースに自分の中で理論立ててCADに数字を入れ込んで設計をします。この時点でVer1を試作をしてホイッスルの設計方法がわかってきました。



この基本設計が実現可能だと判断した時に本格的に商品開発を進めます。


(ホイッスル設計時の参考文献一覧)
守田 栄、(1972年)日本人の高周波聴取能力について
関 和夫、(1975年)音の物理と聴覚
佐藤浩志・奥田日出治・渡辺嘉二郎(1999)ホイッスルキャビティにおける流れのシミュレーションと発生音の可視化
坂本 賢志・松尾 弘毅・西脇 剛史(2009)スポーツ用ホイッスルの音質解析



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